良くある非日常#3


 

イリーナは例の箱を持ってエリアと共に広場のペンチに来ていた。
あたりは午後の買い物の時間ということもあって、人通りも多くなってきていた時間。
二人の話し声はあたりの雑音にまぎれて目立たない。

「で?開いた訳??」
「開かないのだ〜…」

イリーナの隣りにはこの箱を開けようとして砕けた鉄の塊が転がっていた。

「何、お前力づくでこの箱あけようとした訳?」
「のだ。」
「それ拾った物だろー?勝手に開けていいのかよー?とか言いつつあけようと観察する俺。」

エリアはイリーナから受け取ったその手のひらよりちょっと大きいくらいの箱を先ほどから隅からスミまで回しながら見ると片方の眉を器用に上げていった。

「でも珍しいなこれー。」
「のだ?」
「この箱、あんま上等なもんではないけど半永続化した魔法がかかってるな。」
「それでこの昔ドン使ってたマトックス壊れちゃったのだ〜・・」
「盗ったのか?それ・・まあいいや。んで、普通こう言う箱に魔法をかけてまで守りたいブツは鍵も普通の鍵じゃなくって魔法の鍵を使ったりアンロックを上からかけたりする訳なんだけど、この箱、鍵はいたって普通の鍵な上かなりチャチいなー。箱は昔の発掘品で中身は入れ替えられてるかも知れねえなあ」
「じゃあ開けられそうなのだ?」
「ン、久しぶりにやってみっか?」

ポケットの中からシーフの7つ道具の一つのキーピックを取り出すと専業ではないとは思えない鮮やかな手つきで鍵穴を探る。しばらくするとカチャリと小気味良い音と共に鍵が外れた。

「いっちょ上がりー♪」
「中身何なのだー?」
「あんま期待できないと思うぞー?」

さびた金具の音と共に中身が日差しにさらされる。

「何だこれ??」

エリアがひょいと摘み上げたのは無色透明の液体が入った小ビンだった。
無造作に太いコルクで線が閉められていて角度を変えるとちらちらと不思議な色で光る。

そのビンには紙が張られているが古く、表面がこすれたか水で濡れてしまったのかもう既に何がかかれていたのかは見ることが出来ない。

「かなり怪しげなのだ〜・・・・」
「無茶苦茶怪しげだー・・・・つーか見た目だけじゃわかんねえなー?」
「でもビンの中身はもう差し替えられてたりとかしてただの水かもなのだ〜」
「もしくは栓がコルクって事は気化しても危険のない薬なんだろう。」
「魔法の箱に入ってたからもっとお金になりそうなものかと思ってたのだ〜…」
「闇市とかで売ってきたら?酔狂なヤツが買ってくれるかもよ?」

イリーナはため息を付いて先ほどの箱を街角のごみ箱に放り込みビンをポケットに突っ込むと、ぽんとベンチの上から飛び降りた。


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