良くある非日常#1




「ん〜?」

事件は、イリーナが日ノ出屋の店先に置いてある箱を発見したことから始まった。通常であれば、仕入れの品か、はたまた落とし物か、と思う。だが発見したのがイリーナであったことが、この一日を長くする原因でも有った。

「なんなのだ、これ?」

つんつんとモール(血と肉片付き)の先で突つく。ちなみに、この早朝からモール(血と肉片付き)を持っているのは、別段物騒な理由からではなく、彼女の従者であるマイリーの神官に“早く起こしてくれたお礼”をした為だ。

「お宝?」

そんなハズはない。

「なワケ無いよね〜」

イリーナは、馬鹿ではない。というか、むしろ彼女の仲間の一人であるシズルファーナをして舌を巻く鋭い洞察を時折見せることが有る。もっとも、それがただただ野生の勘の賜物なのか、それとも真に深い知性の産物なのか、それは永遠の謎なのだが。
ともあれ、宿(むしろイリーナにとっては家、いや根城か)の前にある謎の物品。これを見捨てておくには、彼女の好奇心と探求心は大きすぎた。

「皆に見せよ〜っと」

モールをひょいと小脇に挟み、イリーナの手には少々余るその箱を両手で持ってイリーナは店内に入っていった。





「おうイリーナ、今朝も早いな」

仕込みをしていた日ノ出屋の店主、コウ・ヒザクラがイリーナに声をかけた。勿論、それと同時にジョッキのミルクを出すのも忘れない。

「好きで早いんじゃないけどね〜。あれ?しーじーは?」
「ああ、シーズィなら、今朝早く森に行くとかで出てったぜ」
「ふ〜ん」
「ところで、その箱は?」
「拾ったのだ」
「もし食い物でも、食うなよ」
「わかってるのだ」

取り敢えず、店主のもの、もしくはこの店に正規に届けられる筈であったものではないことは判明した。
今は、日ノ出屋を常宿にしているのはイリーナ達だけだ。であれば……

「……うふふ〜。良いヨ・カ・ン☆なのだ!」

イリーナの笑顔はとても輝いていた。





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