リエ=フィシア周辺解説


 リエ=フィシア
 リエ=フィシア周辺図
 おお偉大なる叡智の守護者  絢爛たる真紅の獅子
 御名をたたえよ  御名をたたえよ
 天地黎明のその時を  我らに叡智を以って道を示さん
 御名をたたえよ  御名をたたえよ
 おお偉大なる叡智の守護者  絢爛たる真紅の獅子
 その御名は真理に等しく  その御名は天地に等しく

――― アイネルハルト・リエ=ベルキート 
即位の儀にて 


 リエ=フィシア周辺解説
リエ=フィシア
- Lie Ficia -
 リエ=フィシアの首都。皇帝ヴィトマー・リエ=ベルキート直轄の都市。
 国家名と同名であるため、区別のために小フィシアと呼ばれることもある。
 玲帝山への登頂ルートが確保されている唯一の都市。また、都市周辺には古代王国期の遺跡が大量にあり、未だ発見されていないものも多いと推測されている。
 国教でもある知識神ラーダの信仰が盛ん。魔道の研究も大々的に行われており、そのためか都市域内に存在するすべての古代遺跡及びそこから発掘された古代王国期の品のすべては国家の財産として扱われている。無断・無許可の探索・発掘は帝宮侵入にも等しい重罪であり、近衛騎士団の精鋭帝都警備師団により取り締まられている。
 
 首都に相応しく文武百官には皇帝に忠誠を誓った英傑・賢者が揃っている。周辺都市最強と謳われる水軍を有してもおり、リエ=フィシアの権勢を軍事によって覆すのは難しいだろう。
 他の六都市からの徴税のほか、獅顎湾での漁業、及び高品質の真珠が経済の要となっている。無論、獅顎湾での密漁は重罪である。
 
 また、リエ=フィシアのように複数の都市が擁される国家は周辺に無く、その意味でリエ=フィシアは周辺の都市国家とは桁の違う大国といえる。
 だが、それは同時に一枚岩ではない国家の脆さも兼ね備えていることを示す。
 本来はリエ=フィシアを形作る7つの都市は各々別個の都市国家だったのである。それを180年程前に時のリエ=フィシア王にして初代皇帝、アイネルハルト・リエ=ベルキートが武力による統一を成し遂げ、現在の形に至るのだ。
 選帝公という地位、あるいは制度も初代皇帝である彼が創意したものだ。彼は腹心の6人の部下にリエ=フィシア以外の6つの都市の自治を任せ、租税を納めさせた。
 納税以外の自治はほぼ自由に認められていたため、選帝公達は不満も無く自領土を収め、皇帝に尽くした。
 更には選帝公には次期皇帝を評議によって決定するという権利も与えられている。また、これは逆に言えば選帝公の総意による認定なくしてはいかな嫡子といえど玉座に座ることを許されないことを示す。
 とはいえ皇帝の権威というものはやはり圧倒的で、これまでのところ正式に皇太子として立てられた男子が選帝公らに認められなかったことはない。
 選帝公たちは、ほぼ例外なく皇家に忠誠を尽くしているのである。
シヴィヌス
- Sivinuss -
 リエ=フィシア南端の都市。選帝公の一人ジャハ・ヌワールが統治する。
 良馬を多く産出する土地で、リエ=フィシア全体の騎馬の7割はシヴィヌス産である。
 当然のことながらシヴィヌスの騎士団は剽悍で知られており、また騎士団長のティン・ゴ・ジグルリエ=フィシア随一の騎士とも名高い剛の者。事実、彼の戦巧者ぶりと曉勇がこの国の東方と南方の脅威を抑えていると言っても過言ではない。
 大地母神マーファの信仰の厚い土地柄でもある。気候も温暖で地形も峻険さとは縁の無いものであるため、この国の新婚間もない若夫婦が蜜月旅行に選ぶのは大概ここシヴィヌスか風光明媚なリエ=インとなる。
 
 統括領地内には肥沃な平野が広がっているため農耕・牧羊が盛ん。また、南方の新羅台地の遊牧民と独自の交易も行っている。
 また、ふたつの湖では(獅顎湾程の規模ではないが)漁業も行われており、そちらも交易の一翼を担っている。勿論、シヴィヌスの人々の食卓に並ぶことも多い。
トラッカート
- Torackert -
 リエ=フィシア東端の都市。選帝公の一人ルトゥリバ・ザム・イェレーンが統治する。
 地理条件からもわかる通り、青頚湖での漁業が盛ん。
 東方のシラヴィリアからの侵略を幾度となく受けている歴史のせいか、外来者を容易く信用しない風潮がある。
 軍備としては野戦を好まず城砦に寄る傾向にある。だがそれとは逆に、湖上においては機動性の高い小船での艦隊戦を好む。
 良きにつけ悪しきにつけ、孤高の海の男の集まり、といった風情の都である。
 リエ=フィシアにしては珍しく、五大神以外のマイナーな海の女神ン・カトゥスの信仰が盛ん。
リエ=イン
- Lie Ying -
 リエ=フィシア北東の都市。選帝公の一人テム・リエ=ツァルンが統治する。
 選帝公であるリエ=ツァルンの家系には皇家の血が色濃く継がれており、本来帝位継承権を持つことをゆるされない選帝公の中では唯一例外として現皇家であるリエ=ベルキートの血筋に次期皇帝足る世継ぎが絶えた場合の帝位継承権を持つ。
 産業としてはリエ=フィシアのみならず周辺諸国にも例を見ないほどの高品質の武具、工芸品を生み出すことで知られている。これは玲帝山の麓に高質で大規模な銀と神鉄の鉱脈を抱えていることが第一の要因といわれている。
 もう一つの要因は、リエ=インが異国の文化を色濃く取り入れていることが挙げられている。ことに、ザールワールの北東の洋上の島国、ラオシェンの文化を積極的に取り入れていることはリエ=インにとって大きなプラスとなっているようだ。リエ=フィシアとその周辺国家に例を見ない養蚕の技術などは、その恩恵の最たるものと言えよう。
 リエ=ツァルン家はラオシェンの王家と姻戚関係にあリ、現在の選帝公であるテム・リエ=ツァルンは同じく当代のラオシェン君主レノ・マキアロフ・ラオシェンの従兄弟に当たるほどに血が近い。

 こうした国外との結びつきを強めているリエ=インを危険視する声は小フィシアを始めとして諸都市の選帝公たちからも小さくないものになってきているが、帝位継承権を持つリエ=ツァルン家を表だって糾弾するわけにもいかず、現状は膠着状態が続いたままとなっている。
 制するもののないまま、リエ=インは遠方の姻戚国家と蜜月の貿易外交を続け、莫大といえる富を内に抱え込みつつある。リエ=ツァルン家はその財を国庫に溜めこむだけではなく積極的に都市の発展や福祉、教育に注ぎ込んでいるため、国民からリエ=ツァルン家に対する信頼は強いものとなっている。

 富と人心を確固たるものにしつつあるリエ=インだが、その軍備はいささか拍子抜けする程に小さい。敵国と地を接さないために当然ともいえるが、水軍に限って言えばリエ=フィシア最強の水軍を擁する小フィシアの実に1/3の規模ほどしか擁さないのである。陸の騎士団についても同様で、こちらは同様にリエ=フィシア最大最強の騎士団を擁するシヴィヌスに比べて半分程度の規模に過ぎない。
 だが、規模が小さいとはいえラオシェン伝来のフェンサーウーシューといった特殊な技術大系を学んだ兵士達は『リエ=インの兵 一騎当千なり』シヴィヌスの英雄ティン・ゴ・ジグルをして言わしめたほどの錬度を誇っている。
ヴィーネ
- Wine -
 リエ=フィシア北端の都市。選帝公の一人エルレーネ・マクレガーが統治する。
 標高は高いのだが、玲帝山麓と北の高台との間に領土が位置するため、そこを吹きぬける青頚湖からの水分を含んだ暖かい風のおかげで年中を通して適度な湿度と温度が保たれている温暖な気候。
 その気候のおかげか、玲帝山麓の土壌のおかげか、周辺国家にも類を見ない葡萄とワインの名産地として知られている。『ワインはすべからくヴィーネ産だと証明されれば美味である』とまで言われるほどの品質を誇る。
 また、他にも放牧も盛んで主に山羊や羊が育てられている。山羊肉、羊肉は勿論、山羊の乳のチーズや羊毛の衣類など、古式ゆかしい生産品とそれらを交易に出して富を得ている。
 
 軍備は山岳地帯という地の利を生かそうとしてか、弓隊に力を入れている。騎士団のメンバーはほとんどがレンジャー技能を高いレベルで所持しており、サバイバル技術にも優れている。
 騎士団の規模自体は小さいものの、地の利もあいまって守備に関してはかなり堅固と言える。
 
 信仰に関してはそれ程特色が無く、五大神が平均的に信仰されている模様。
ルボラーゾ
- L'boraso -
 リエ=フィシア北西の都市。選帝公の一人ベークンド・リョワーシカが統治する。
クリセア
- Cliseah -
 リエ=フィシア西端の都市。選帝公の一人アーダベルト・クァフェル・リッツベルケルムが統治する。
玲帝山
- れいていざん -
 リエ=フィシアの中央にそびえる霊峰。竜の住まう峻険にして偉大なる山。山頂部にはラーダ神が降臨した跡である遺跡、叡智(えいち)(はこ)があると言われているが、実際に目にした者は少なく、証言もまばら。
 登頂へ向かうルートは小フィシア内にしか存在せず、また小フィシアでは帝都騎士団の精鋭帝都警備師団が不法侵入者を厳しく取り締まっており、一般人の参拝は不可能である。
獅顎湾
- しがくわん -
 小フィシアの富と軍事力を保証する母なる海。豊潤な海の幸は自国内の糧食のみならず輸出として糧を得るだけの水揚げ量を誇る。
 かなり陸地に食い込んだ湾であるにもかかわらず海流は比較的荒く、その為か外洋から大量の魚群が回遊してくることも珍しくない。食卓に並ぶべき豊潤な魚類・貝類・海藻類以外にも、珊瑚や真珠貝なども多く産出されている。時折鮫やシードラゴンなどの目撃例もあるが、それでも小フィシアにとっては生命線となる、無くてはならない母なる海なのだ。
 また海底には古代王国期の遺跡が沈んでいるとも言われているが、小フィシア領土内なので一般冒険者たちの探索は許可されていない。
 不法探索を挑もうとする輩も後を絶たないが、周辺諸国最強を誇る小フィシアの海軍及び漁場を守ろうとする小フィシアの漁師達の警備網をすりぬけられるはずも無く、例外なく捕らえられ、重罪に処されている。
赤瞳湖
- せきどうこ -
 
青頚湖
- せいけいこ -
 リエ=フィシア北東に位置する巨大な湖。塩水で生息する魚も獅顎湾と同種のものが認められている為、湖底で獅顎湾と通じているのでは、と見られている。
 リエ=インおよびヴィーネからは対岸のザールワールへの定期的な貿易航路が拓かれており、リエ=フィシア東側の貿易の枢軸を担っている。
 魚介類の類も豊潤で、獅顎湾には及ばないものの、貿易と同じくリエ=フィシア東側の海産物のメッカでもある。獅顎湾での漁業は主にトラッカートが担っている。リエ=インヴィーネは湖底の地形などの影響から漁場としてさほど恵まれていない為でもある。
 湖底からは玲帝山西側麓には及ばぬものの質の良い神鉄が産出されており、リエ=インが誇る高質の武具の支えともなっている。
妖精の樹海
- ようせい-の-じゅかい -
 玲帝山南東部に広がる広大な樹海。その総面積は玲帝山の面積自体の八割にも匹敵するといわれている。この樹海のため、小フィシアトラッカート間には街道が走れず、シヴィヌスを経由せねば通れなくなっている。
 樹海内には危険生物の類の発見例は報告されていないが、迷宮のごとき密林のためか樹海内の調査は一向に進んでいない。ある程度以上奥=玲帝山方向に進もうとすると、例外無く道を見失い、さまよった挙句樹海の外に放り出される事になる。
 一説には『迷いの森』と化しているとも言われているが、真相は今もってなおリエ=フィシアの賢者の間で論議中である。
 深くまで入りこまない限りにおいては、この樹海は様々な薬草やハーブ、茸や野鳥などの宝庫であるためトラッカートの狩人の良い狩猟場として幸を恵んでいる。
新羅台地
- しらぎだいち -
 リエ=フィシア南方に広がる広大な草原。
 剽悍な騎馬民族が遊牧生活を送っている。周辺国家との交易も行っている。
 主に小フィシアシヴィヌスデキアスと言ったリエ=フィシア及びその周辺都市国家と交易をしている騎馬民族達はバザーと呼ばれるベースキャンプに集い、情報や商品の交換を行なっている。
 新羅台地の遊牧民たち、そして彼等の形成するバザーはいかなる国家からの支配も受けず、いかなる法の制約も受けないが、独自の(そして不文律の)法を創り、守っている。
 犯罪者まがいの連中が集まることでも知られているが、バザーリエ=フィシア南方国家にとってなくてはならない交易の場でもあるのであまりに目に余る場合以外は黙認されている。また、バザーの方も看過できない重犯罪(例えば殺人など)に対しては毅然とした態度で対応しているのでリエ=フィシア側も目くじらを立ててはいない模様。
バザー
- Bazaar -
 新羅台地の遊牧民たちが形成する交易の場。周辺国家からも多くのプライベートトレーダー(PT)が訪れる。元々は物々交換の場であったが、周辺国家のPTが多く参入するようになり、現在ではガメル銀貨も通用するようになっている。最近では小フィシアではさばくのが難しい魔法の品を持ちこむ冒険者と、それを目当てにする他の冒険者・好事家が訪れることも多い。
 バザーは六人の重鎮が仕切っており、彼等は六長老と呼ばれ、バザー内ではかなりの発言力と影響力を持つ。その権勢は大都市のギルドマスターに匹敵するか、それ以上のものである。
 なお、六長老とは役職の名であるため、実際に高齢の人物が就いているとは限らない。基本的に世襲制では無く完全実力制であるところは剽悍な騎馬民族の集まりらしいと言えよう。
 現在の六長老は以下の通り。順序は上から六長老に就いた順番。六長老の間に序列の差異は無い。
 
 ムディ・ロジャーナ  69歳 人間 男
 六長老を束ねる位置にある。その人脈は周辺諸国の首脳部にも及ぶと言われている。
 年に数度、非公式にリエ=フィシア諸都市の選帝公が訪れては様々な情報を仕入れ、交換している。
 人当たりの良い、温厚な人物。だがその裏で成し遂げた謀略の数はまさに梟雄と呼ばれるに相応しい。
  
 マハム・アル・クス  67歳 人間 女
 ムディ・ロジャーナとは竹馬の友であり、その知恵袋的存在。
 “万書のマハム”とも呼ばれる博覧強記の人物。活字中毒で、これまでに集め読破した書簡は軽く5桁に上る。
 いささか偏屈だがその知識は深く広く、古代王国期の歴史についての造詣の深さは他に並ぶ者がいない。
 
 チャン・ポゥ・リェン  152歳 グラスランナー 男
 六長老の中では唯一のグラスランナー。新羅台地の出身だが、若い頃は世界中を巡った旅人でもある。
 美術品をこよなく愛し、また自身も周辺国家では知られた水墨画家でもある。
 バザーにおける新旧の美術品の鑑定・流通の第一人者。
 
 タカシ・キジマ  47歳 人間 男
 遠く東方のラオシェンから流れてきた剣士。寡黙で無愛想だが、信義には厚い。武芸百般の達人。
 20年程前ムディ・ロジャーナに命を救われて以来その身辺の警護を司ってきた。
 現在はバザーの警護全般を仕切っている傍ら、若者に武芸の教練も行なっている。
 
 カレラ・マクガレル  26歳 人間 女
 ザールワールの高貴な家の出らしいが、詳しくは当人が語りたがらない。絢爛たる美貌の持ち主。
 若さに似合わぬ識見と卓絶したカリスマの持ち主。剣の腕も師のタカシ・キジマをして『天賦』と言わしめた程。
 バザーに来るまでは冒険者稼業をしていたこともあり、冒険者相手のトレードを司っている。
 
 キャシアス・セルブリーゾ  41歳 人間 男
 元は小フィシアの近衛騎士隊長を務めていたが、故あって騎士位を剥奪され、バザーへ流れる。
 ラーダの信仰篤い司祭にして研究者でもあり、古代王国期の魔法の品についての造詣は深い。
 経歴を買われて小フィシアとの(非公式の)交渉役を務める傍ら、魔法の品も扱っている。
デキアス
- De'cuiath -
 小フィシアの南の都市国家。ラクヤード・ル・フェンセレンが統治する。
タン=ゼ
- Tang Ze -
 小フィシア南西の都市国家。ギゾ・カシワが統治する。
コ=クス
- Co Kuth -
 シヴィヌス南東の都市国家。ルランゾ・ヘルケマイヤが統治する。
シラヴィリア
- Ciravilia -
 シヴィヌスの東の都市国家。マリアンヌ・ユーフスが統治する。
ツーガ
- Tzougua -
 トラッカート北西の都市国家。キャンザ・デ・クラシアが統治する。
ザールワール
- Zalewale -
 リエ=イン北東の都市国家。オットー・フォン・クラウシュヴァイゼンが統治する。
 リエ=フィシア周辺の国家の中では最も古い歴史を誇る。身分の上下が厳しく管理されており、未だ階級による市民の管理が徹底されて行なわれている。
 周辺国家の中では唯一、公然と奴隷の売買が行なわれている国家でもある(奴隷の相場は女性は10000ガメル以上、男性は7000ガメル程度)。
 リエ=インヴィーネとは青頚湖越しの貿易航路で密度の濃い交易を行なっている。その交易のもたらす富はザールワールにとって決して軽視できないほどに巨大なものとなっている。
 基本的にザールワールは交易によって富を得ている都市で、北の大陸との交流も盛ん。
 その意味ではリエ=インよりも諸外国の分化を取り入れそうだが、長い歴史に誇りを持つ国民性故に異文化は中々取り入れられない模様。
 ちなみにザールワールにおける身分は王族貴族騎士上級市民下級市民、となっている(奴隷は人では無く所有物扱いなので身分、という考え方はされていない)。
ゾナンド
- Zonande -
 ルボラーゾ北西の都市国家。ユーリア・ブルワシカ・ノートフが統治する。
クラース
- Kurarth -
 クリセアの西の都市国家。シーニ・バークラスが統治する。



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