無機質な視線。

誰からもそう言われていた。

まるで常にサイトを透して見られているようだと。

或いは、カメラに映されているようだと。

だがそれは侮蔑や嫌悪から言われているのではなく、称賛と ――― 畏怖。

曰く、正確無比。

曰く、精密機械。

曰く、軍事衛星。

友に向ける視線はどうだったか。

家族に向ける眼差しはどうだったか。

恋人に向ける瞳は ――― ?

思い出せない。

いや、思い出さない。必要が無いから。

私のいる場所には、友も、家族も、愛しい人もいないから。




――― いらないから ―――





Wolf Eye




だけれど、誰も知らない。味方の兵もチームの連中も。

私の視線がこんなに熱い事に。

いつからだろう、スコープの中の存在に愛おしさを感じ始めたのは。

いつからだろう、スコープの中の標的に熱い視線を送るようになったのは。




スコープが私の瞳。

レーザーサイトが私の視線。

トリガーを引く事が私の愛撫。

銃声が私の声。

弾丸が私の愛。




標的だけが、私の恋人。

出会って、見つめて、愛を囁いて、そして終わり。

一方的な、そして刹那的な愛。

歪んでいる、と言われるかもしれない。

だが歪んでいない愛などあるの?

愛なんて、精神の歪みが生み出したナルシチズム。




スコープが私の瞳。

レーザーサイトが私の視線。

トリガーを引く事が私の愛撫。

銃声が私の声。

弾丸が私の愛。




私は歪んだ愛の持ち主。

瞳で見付けて

視線を送って

愛撫して

声を出して

愛を囁いて

終わり。



セックスと同じ。

違うのは身体が交わるか、そうでないかだけ。

行きずりの関係、ただそれだけ。

私の愛だけが相手を貫く。

視線も声も感情も、決して互いに交わらない。






なのに。

アイツは。



私に瞳を向けてきた。

私に視線を絡めてきた。

私に向けて愛撫をして。

私に声を掛けて。

私に愛を囁いた。



鼓動が高鳴る。

これほどの激しい愛情。

もう、ドラッグも私の昂ぶりを鎮められない。

狂おしいほどの激情。



ああ、そうか。

アイツが、この歪んだ心の檻から私を解き放つのか。






「 ――― Solid・Snake ――― 」





静かにそっと、愛しいアイツの名を呟く。

早く私の前に来て。

早く私を見て。

早く私に愛を囁いて。

早く私を ――― 解き放って。










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