血にまみれても



その日彼ー緋勇龍麻ーは転校してきた。
容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群・・・絵に描いたような完璧な彼。
だけど、誰が話しかけても興味がなさそうに答える。
嫌なくらい冷めているそれがボクー桜井小蒔ーの緋勇君に対する第一印象だった。


彼が来てから初めての夏が訪れた。
ここまでに色々な事件が起こった。
その度にボクは緋勇君に惹かれていった。
彼は、屋上によく寝転がっている。
今日も行ってみるとやっぱりいた。
いつもと違うのは彼は目を瞑って泣いていた。
「どうしたの?」
ボクは、思い切って話しかけた。
「小蒔か」
「うん・・・何で泣いているの?」
「・・・辛いだけだ」
「え?」
僕は思わずに聞き返した。
彼は、今までに誰の前でも弱音を吐いたことはなかった。
「・・・忘れてくれ」
そう言って彼は屋上を出て行った。
ボクには、疲れ切った表情しているように見えた。



彼が、自分の出生を聞かされていた時、彼は何も言わなかった。
その次の日、彼は自分の宿命を知った。
哀しすぎる宿命だった。
けど、彼は涙を流さなかった。
彼は、空を見上げていた。
その直後に、鬼が出てきた。
暫くして、全部倒して彼を見ると血まみれになって倒れていた。
ボクは、頭の中が真っ白になっていった。



クリスマスイブ
ボクは、早く家に帰ろうと急いだ。
京一が彼が僕を待っていると教えてくれた。
ボクは信じられなかった。
京一は、そんなボクを見て、
「嘘じゃねえから、安心しろ」
そう言ってボクの肩を軽く叩いた。

待ち合わせ場所に、彼は本当にいた。
「元気だったか?」
そう言って笑った。
初めて見た表情だった。
ボクは、何も言えなかった。
「あのさ、全てを終わらせたら・・・俺の話を聞いてくれ」
ボクは黙って頷いた。



そして今、全てを終えた彼の話を聞きにボクは屋上にいる。
「俺は、明日香学園にいる時にある《力》の持ち主と戦った」
彼は、遠くを見ながらそう言った。
「そいつは、人を操る《力》を使い様々な悪事をした。
 俺は、その時にそいつと戦って・・・殺した」
ボクは、今まで味わったことのない衝撃を感じた。
「人を殺した?」
「ああ、俺は、・・・ただの人殺しだ」
彼はそう言って俯いた。
「・・・違う」
ボクは意識せずにそう言っていた。
「絶対に、ひーちゃんは人殺しじゃないよ!!」
ボクは、そう思う。
「人殺しだよ。この戦いの間にも何人も殺している」
「あれは、」
「どう言った理由があっても、人殺しだよ」
ボクは黙ってしまった。
彼がボクの方を向いた。
「・・・それでも、俺は小蒔が好きだ」
また、ボクの体を衝撃が走った。
「ほ、本当?」
思わず聞き返した。
「本当だよ」
彼はそう言って微笑んだ。
ボクが知っている彼だった。
「じゃあ、キスしてくれる?」
ボクがそう言うと彼は、驚いたような顔をしている。
彼は暫くしてボクを抱き寄せてキスをしてくれた。
「よお、熱いねー」
京一がそう言って出てきた。
ボクと彼は慌てて離れた。
「現場写真もあるし、今度の一面はこれね」
アン子もいる。
「な、何でここに」
ボクと彼の声が重なった。
「いやー、特ダネを探していたら」
「俺は、ここで寝ていた」
2人はさも当然のように言った。
だんだん腹が立ってきた。
「こらー!!2人とも!!」
「お幸せに」
アン子がそう言って京一と逃げていった。
「ひーちゃん、後を追うよ」
「仕方ない」
彼は微笑みながらそう言った。




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