ジルオールな人達



「ロス○ールの遊び人」

「…………………………………………な、何なんだ、それは?」

 いきなり龍麻に指を突きつけられ、意味不明の言葉を投げ掛けられた醍醐は、たっぷり1分以上も硬直した末にようやくそれだけ言葉を絞り出した。

「だからぁ、醍醐はロ○トールの遊び人なんだってば。あ、でもその内守護神に変わるから大丈夫だよ。うっらやましぃ〜♪」

 屈託の無い笑顔で更にワケの分からない事を言われ、頭を抱える醍醐。

「ほら、だからそんなに詰襟きっちり締めないで、もっと胸元はだけておかなくちゃ」

 言いながら醍醐のガクランのボタンに手を伸ばす龍麻。

「ま、待て!そ、それより『お前達』の格好は何なんだ!?」

 そう、龍麻は動き易そうな革の服を着て、その上にプレートメイル等を身に付けているし、その横にはシースルーで西洋の巫女服に似たデザインの衣装に身を包み、面白そうな顔で事態を見守っている小蒔がいたのだ。

「僕は当然竜殺しだよ」

「竜殺しって…お前自身が龍じゃないか…」

「エヘヘッ、ボクは地の巫女だよ。ボクに取っての冒険ってひーちゃんと一緒にいる事だって気付いたからずっと一緒にいるんだ」

 まるでエンディングを迎えたような台詞を言いながら、龍麻の腕に抱き付いて小蒔が言う。それを見て醍醐が複雑な表情になった。

「あ、ゴメン…。醍醐も独り身じゃ寂しいよね?でも大丈夫。君にはロス○ール王女がいるじゃないか─―おーいッ!」

「はぁ〜い」

 間延びした甘い声で返事が聞こえたかと思うと、パタパタと足音をさせて純白のドレス姿をした舞子が走ってきた。

「うっわー、高見沢さん綺麗〜」

「ホント、良く似合ってるよ」

「わぁ〜い♪ダーリンに誉められちゃったぁ〜。でもぉ、舞子もダーリンと一緒が良かったなぁ〜」

 ちょっぴり残念そうに言う舞子。只一人、醍醐だけがワケの分からない世界に置いてけぼりにされている。

「大丈夫だよ、醍醐ならきっと大事にしてくれるから。――ね、醍醐?」

「なッ!?ちょ、ちょっと待て龍麻!!」

「大事にしてあげないと、闇に堕ちちゃうよ?」

 慌てる醍醐の耳元に口を寄せて龍麻が囁いた。その言葉に本能的に危険な物を感じ取る醍醐。ゴクリ≠ニ生唾を飲み込み、乾いた声で龍麻に尋ねる。

「も、もしも闇に堕ちたらどうなるんだ?」

『うふふふふふ〜。知りたい〜?』

「うおッ!?」

 突如頭の中に響いた声に驚愕の声を上げると、ブンブンと思いっきり首を横に振る醍醐。流石の守護神も虚無の子には勝てないらしい。その顔には凄まじいまでの恐怖の表情が張り付いていた。

「じゃーね」

「お幸せにッ」

 にこにこ笑って手を振る舞子と絶望に満ちた顔の醍醐を残し、龍麻と小蒔はその場を去って行った。

 

 少しして歩きながら小蒔がポツリと龍麻に尋ねた。

「そう言えばさ、紫暮クンが道場で待ってるような事言ってたよ。『決着をつけよう』だってさ。行かなくて良いの?」

 それを聞いた龍麻は、小さく溜息を1つ吐くと首を横に振って小蒔に答えた。

「良いんだよ。行けば呪われるから。それに決着なんてとっくについてるんだから。それならまだ比良坂を闇から救ってあげるほうがマシだよ。まあ、本人は兄さんと一緒にいられるからって結構喜んでいたけどね」

「兄さん?」

「あ、男主人公だと関係ないから気にしなくて良いよ」

「ふ〜ん…」

 よく分からないと言う表情で小蒔が首を傾げる。

「それより今度2人で一緒に天野さんの船に乗せて貰おうね?」

「うんッ!!」

 龍麻の言葉に嬉しそうに肯く小蒔。些細な疑問はどうでも良くなったらしい。

 

 更に龍麻達が暫く歩いていると、今度は皇神の3人に出会った。と、御門の姿を見るなり龍麻が心底悲しそうな顔をする。

「おいおい、どうしたんだよ、先生?」

 しかし龍麻は村雨には目もくれずに御門の元へと走り寄って叫んだ。

「晴明ッ!?頭のアンテナはどこにやったの!?」

 直後御門の表情がどーんと落ち込む。どうやら彼はぢるおーらーだったようだ。

「あの…ご主人様?」

「あ、芙蓉は火の巫女だから、小蒔と仲良くしていてね?」

「そうだよ。芙蓉さんはボクと一緒にラ○ラスでも飛ばそう?大丈夫、他にも水の巫女の雛乃とか、風の巫女のマリア先生とかいるからさ」

「おや?貴方達の担任はファ○ロスの雌狐ではないのですか?」

 ようやく気を取り直した御門に、龍麻が寂しそうに首を振る。

「そう言ったら物凄く嫌がられちゃってさ。チャッピーって呼んでもダメだったから、仕方なく風の巫女にしたんだ」

「そんなキャラ○ターズ白書を読まなきゃ分からないネタを…。まあ、それなら真紅の魔法戦士では?」

「黒い閃光の壬生は良いとして、無限の魂が本郷だって聞いたら絶対ヤだって言ってた」

「それはイヤでしょうね…」

「だって、何か正義の味方っぽいから絶対やらせろって言うんだもの。お蔭で紅井と黒崎が団員足りなくいって怒ってたよ」

「そ、そうですか…」

 御門は引き攣った顔でこめかみを押さえるのだった。

「おいおい、さっぱりワケが分からねぇぞ?」

「もう!村雨はコレでもつけて大人しくしてなよ」

 龍麻はそう言うとゴソゴソと荷物から何かを取り出すと、村雨の頭に何か取りつけた。

「おい…何だコレは?」

「見れば分かるじゃないか。角だよ」

 そう、村雨の額には大きな角が生えていたのだ。

「でもいくらウル○ーン長老だからって芙蓉に迷惑かけちゃダメだよ?あ、なんなら白虎将軍でも良い?」

「いや、俺はどっちでも…って、何で俺が角を生やさなきゃならねぇんだ!?」

「えー?やっぱりみんなコー○ス族じゃ嫌なのかなぁ?霧島も角付けて森のおりこうさんって呼んだら嫌な顔してたもんな。アイツはさやかちゃんがリーダーやってる解放軍のメンバーの方が良かったかな?けど彼女も彼女で父親が死の商人じゃ嫌みたいだったし…」

『そんなの全然マシやないか』

 突然聞こえた声に振り向くと、そこには劉が立っていた。よく見ると前歯が出ている。

「劉?お前その顔は?」

 村雨の問いに、滂沱の涙を流しながら劉が答えた。

「アニキにやられたんや。ワイは刃向かう者だって…」

「だって、弟系のキャラって言ったらやっぱりさ」

 後ろでは小蒔と御門が肯いている。

「けど弟系ならもう一人いるやないか?こんな6分の1でしか登場せえへんヤツより…」

『コイツの事?』

 更に声が聞こえた。見ると露出度の高い服を着てトゲトゲのチョーカーやブレスレットをした藤咲が、これまた露出度の高い黒鎧姿に刀を持った如月を連れて現れた。

「あ、藤咲!如月も良く似合ってるよ」

 二人を見た龍麻がニコニコして話し掛ける。

「ありがと、龍麻。でもさぁ、なぁんかコイツって不服そうなのよね」

「えー?どうして、如月?」

 龍麻が訊くと如月はやれやれと言った感じで口を開く。

「僕が月光なのは良い。藤咲さんが僕の姉だと言うのも正直分からなくはない。だが…それなら何故魔人バージョンなんだ?」

「だって…女主人公ってやった事ないんだもの(実話)」

「アニキぃ〜、ならワイも見た事ない言うんか?」

「ないよ。どうせED見るのは地の巫女ばっかりなんだし」

 アッサリと言う龍麻の言葉に、如月は嘆息し、劉は哀しみの涙を流す。只一人小蒔だけは顔を朱くして照れるのだった。

「あれ?でも龍麻って1stEDは青龍将軍じゃなかったっけ?それに笑顔の踊り子も見たって聞いてるけど…」

 何気ない藤咲の言葉に、小蒔の顔色が変わる。

「ひーちゃん、それ本当?だから雪乃にあんな青いビキニ鎧とか大鎌あげたり、マリィにつけボクロしたりしてたの?」

「え?いや、あの…青龍将軍は他の二人が激烈だったから相殺されて…。それに笑顔の踊り子は折角フ○ントの息子で始めたんだからついでに見て置こうかなってだけで…。大体二人ともそんなにラブラブしたEDじゃないから…」

「そうだけどさぁ」

 小蒔が不承不承ながら納得しかけた時、

「そう言えば今度は玄武将軍を見るとか言ってなかった?」

 再び藤咲が口を挟んだ。

「…そう言えば最近よく、青山霊園で葵に会ってたりするよね?」

「いや、その…」

「ひーちゃん!?」

 語尾にアクセントを置いて語気を強める小蒔。

 その後ひたすら謝り倒した龍麻が許してもらったのは3日後の事だった。

 

「改・激・烈!!――HAHAHAHAHA!!」

 その頃江戸川区の某所で未来の勇者となる事を目指したメキシコ人ハーフが、錆びた槍で戦いの練習をしていた。

 







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