そうるな人達



 その日、龍麻と小蒔の姿を見て、京一と彼の後を付いて歩いていた霧島は絶句した。
「…ひーちゃん…お前、それ、何…?」
 何時もの学生服姿ではなく、翠色のジャケットに白いスラックス、胸からは髑髏のシャツが覗いていたりする。
 龍麻はニコニコしながら、手に持った銃のような物を見せびらかして、当たり前の様に言った。
「G○MP♪」
「………………桜井さんは?」
 言葉を失う京一に代わり、見なれぬ水色のブレザーとチェックのスカートをはいた小蒔に向かって、霧島が訊いた。
 小蒔は妙な装備をいじりながら明るく答えた。
「アーム○ーミナル♪」
 その時、突然醍醐が走り寄って来た。
 何故か眼鏡を掛けている。
「ひっとぽ○んと回復するなら、傷薬とぉ宝○で♪」
 しかもいきなり変な歌を歌い出す。
「ひいいいちゃあああん!」
 その異様な姿に小蒔が激しく怯える。
 龍麻が醍醐を冷たく一瞥して、
「タ○シ君の真似しても小蒔はあげないよ。君は『聖獣○ャッコ』なんだから」
 と言いながらGA○Pを操作した。
「うわああぁぁ!せ、せめて桜井のアー○ターミ○ルへええぇぇ!!」
 醍醐は涙を流して叫びながら吸いこまれて行った。
 暫し呆然としていたが、
「………………で?お前等一体俺達に何の用だ?」
 疲れ切った様に京一が訊く。
「コレ着て。コレ持って」
 龍麻が京一に白いジャケットを着せ、モデルガンを持たせる。
 ジャケットの背中にはリボルバーのプリントなどがされていた。
「霧島君はコレ被って」
 一方で小蒔が、角が生えた黒と黄色の帽子を無理矢理霧島に被せていた。
『………………』
 完全に言葉を無くした2人を尻目に上機嫌で龍麻達は立ち去った。




「ようお2人さん。…何だその格好?」
 雨紋が顔を引きつらせて言った。
「やあ、ブラ○ン」
「…………は?」
 龍麻に言われて雨紋が間の抜けた声を出す。
「君には『MOON サ○ュバス』のペルソナをつけてあげるね」
 龍麻がそう言うと小蒔がポケットからカードのような物を取り出して雨紋に渡した。
 藤咲の写真だった。
「……いや……嬉しい……けどさ……」
 雨紋に向かって微笑むと、龍麻と小蒔は立ち去った。




「あーッ!リーダー!」
 龍麻はある人物を見つけて嬉しそうに叫んだ。
「何の事だよ?先生」
 怪訝な顔で村雨が尋ねる。
「だって、タバコが似合いそうで年以上に老けて見える知り合いって、村雨しかいないんだもん」
「…先生…てめぇ、俺を一体何だと…」
 村雨の言葉に怒気が含まれる。
 しかし、龍麻は気にした様子も無く、
「ダメだよ、リーダーはそんな話し方しないよ。せめて僕って言ってくれくちゃ。じゃあね」
 既に怒りを通り越して呆れかえっている村雨を後に、2人は立ち去った。




 2人は今度はコスモレンジャーに会った。
 3人とも珍しく私服姿である。
「アッ!マ○ク!南○君!ア○セ!」
 龍麻が声を掛ける。
「…俺っちの声がでかいからか?」
「フッ、まだましな方なんだろうな…」
「…そりゃあ、リボンが武器だけどさ…」
 3人一様に複雑な表情で呟く。
「ねぇ、3人とも一緒に来てよ」
 龍麻はそう言うと、小蒔と手を繋いで歩き始めた。
 3人は顔を見合わせていたが、結局怪訝な顔をしながらも後に続く。
 着いた所は内装が青で統一された部屋だった。
 そこでは、比良坂が唄を歌い、何故か壬生がピアノを弾いていた。
 しばらくしてタキシード姿の道心が現れた。
「ベルベッ○ルームにようこそ」
「お、おい、師匠…これ…」
 紅井が怯えた眼で訊く。
 黒崎と桃香も同じ眼をしていた。
「頑張ってね」
 そう言うと龍麻と小蒔は部屋を出た。




「押忍!、龍麻じゃないか」
 外道 ドッペル○ンガーが現れた!
「ああッ!物理攻撃は反射されちゃうから気を付けて!」
 小蒔にそう言うと、龍麻はポケットから何か出して、ワケが分からないと言う表情の紫暮に向かって何か投げつけた。
「アギ○オストーン」
 火神之玉だった。
「く…くそ…」
 結局ワケも判らぬまま、紫暮は倒れた。
「EXP10ポイントと…2000マ○カを手に入れた」
 言いながら紫暮の財布を漁る龍麻。
「マッ○が沢山たまったら、回○の泉(温泉)に行こうね」
「もう、えっちなんだからぁ」
 ラブラブ状態で2人は立ち去った。
 酷ぇ…………。




 次の犠牲者は御門と芙蓉だった。
「メ○リ!!」
「…………?」
 首を傾げる芙蓉。
「龍麻さん?」
「御門!コレあげるから少しだけ芙蓉貸してね」
 そう言うと、龍麻は御門にハープを持たせ、月桂樹の冠を被せて立ち去った。
「…………こんなマイナーなキャラですか…………」
 御門もメガ○ニストだったらしい。
「あの…ご主人様…?」
 引っ張られながら芙蓉が口を開く。
「ゴメンね、今日は君のご主人様は僕じゃないの」
「アッ、忘れてた。コレ着といてね」
 龍麻の言葉に続けて、小蒔が芙蓉に服を渡す。
 メイド服だった。
「……あの……」
「もうすぐだから」
 着いた所では――
「ま、真神学園にヨーソロ…」
 海の男な姿をした犬神が出迎えた。
 しかし、
「あーッ!先生、しんせいじゃなくてパイプ煙草にしてって言ったじゃないですか!」
「しかも、上に白衣なんか羽織っちゃダメだってばッ!」
 龍麻と小蒔が口々に抗議する。
「う、うるさい!いきなりこんな格好させやがって」
「だからアン子に頼んで天野さんのスリーサイズ聞いてあげたじゃないですか!」
「ウッ…、わ、分かった!言う通りにすれば良いんだろう!」
「『地霊コ○ルト』にしないだけありがたいと思って下さいよ」
「クッ…」
 龍麻の言葉に何かを振り切る様にする犬神だった。
「…それで私は何をすれば…?」
 戸惑いながらもメイド服に着替えた芙蓉が訊く。
「アッ!似合う、似合う!」
 その姿を見た龍麻が嬉しそうに言った。
「本当はテンプ○ナイトの衣装も用意したんだけど、べ○よりやっぱりメア○だよね!」
「だよね!」
 小蒔が頷く。
「…あの…」
「いいの、そこにいてくれれば。何なら入り口の掃除でもしてくれても良いけど」
「…かしこまりました」
 大人しく掃除を始める芙蓉だった。
「……さてと、合体、合体♪」
 今日一番の笑顔で言う龍麻。
「ひーちゃん、後でボク達も合体しようねッ」
「アハハ、小蒔それは勿論だけど、それ以上言うと【陰】行きになるから気を付けてね」
「エヘへ、ゴメン、ゴメン」
 その時、龍麻のG○MPから醍醐の声が聞こえた。
「せめて俺を入れて3身合体をしてくれぇ!!」
 ピシッ
 龍麻の額に青筋が走る。
「まずはコレを造魔(うらみつ)の餌にしてやる」
「うぎゃああああッ!!」
 憐れな醍醐だった。
「さ、次は…」
「『霊鳥ス○ク』と『夜魔○フィスト』を合体させるって言ってなかった?」
「そうそう、じゃお願いします」
 龍麻の言葉に犬神が頷く。
 出来たのは――
「『魔獣ネ○マタ』だよ。仲良くしてね」
 黒いネコ耳と尻尾を生やしたマリィだった。
「あーーーッ!!可愛いーーーッ!!」
 思わず小蒔が駆け寄り、抱き締めて頬擦りする。
「可愛い、可愛い、可愛い!!」
「にゃ、にゃ、にゃにゃにゃーッ!!」
 じたばたもがくマリィ。
 そこでふと、小蒔が思い出した様に顔を上げた。
「あれ?ところでひーちゃん、このネコマリィって確か…」
「ウン。前に藤井さんの書いたSSのネコマリィが、あんまし可愛かったからパクッた」
「あのね…」
 しかし、邪悪な行いには天罰が降るものである。
「楽しそうね…、龍麻…」
 神霊 ボサツガンが現れた!
「ああッ!?いきなりラスボスがッ!!」
「どうしよ、ひーちゃん!アレ、『タル○ジャ』も『ラ○カジャ』も『マカカ○ャ』も使えるんだよ!」
「とりあえず壁を…」
 神獣招来。
「邪妖滅殺…」
 龍神招来。
「HAHAHA、タノシーネッ」
 しかし、ボサツガンの放つ光に、『神獣○ンブ』と『龍神セイ○ュウ』はアッサリ塵となる。
「ふ、不覚…」
「MY GOD!!」
「ああッ!?『メギ○ラオン』までッ!!」
「ひーちゃん、こっちもせめて『タ○カジャ』と『ラク○ジャ』と『メディ○ラハン』使える仲魔(たかみざわさん)くらいは連れて来るべきだったね…」
「そうだね…」
 呆然と呟き合う2人に再び『メギド○オン(ジハード)』が降り注いだ。
 龍麻は、薄れゆく意識の中、川岸に立つ龍山の姿を見た気がした。










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